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13 両編成、重連で欅平へ向かう黒部峡谷鉄道のトロッコ電車

 

秘境・黒部の谷へ

全国で運行されているトロッコ電車の代表格が黒部峡谷鉄道。かつて秘境と呼ばれた北アルプス・黒部の急峻な谷を縫って走っています。誰もが訪れることが出来るようになったのは、黒部川の電源開発のおかげです。豪雪地帯のために冬場は運行できないのですが、春から秋にかけて、全国から大勢の観光客が訪れています。

富山地方鉄道本線の終点・宇奈月温泉駅に隣接しているのが、黒部峡谷鉄道「宇奈月駅」です。ここから欅平まで20.1km。単線の電化区間で、軌間(レールの間隔)は762oのナローゲージ。600Vで運転されています。宇奈月駅を出るとすぐに黒部川を渡る新山彦橋に差し掛かります。よく鉄道ファンが撮影ポイントにしているところですね。鉄橋が22カ所、トンネルが41カ所もあって1時間20分で終点・欅平に到着です。

車窓から見える景色は、山また山。絶景に次ぐ絶景。時折、関西電力の発電所が見える以外は、よくもまあ、こんなところにレールを敷いたものだと、驚かされます。宇奈月温泉から徐々に高度を上げていくため、秋には緑の葉が次第に黄葉や紅葉となり、そのうち雪も見られるという色とりどりのパノラマに包まれることができます。通称「五段染め」です。

車両は、電車型のリラックス車、パノラマ車などもありますが、寒い時期以外は窓がなく出入り口に鎖があるだけの普通車が人気です。開放感にあふれてトロッコ本来の魅力を味わえるからでしょう。

この鉄道が敷設されることになった最初のきっかけは、アドレナリンを発見し、消化剤タカ・ジアスターゼを生み出した高峰譲吉博士というから、面白いものです。博士は生まれて間もなく金沢に引っ越していますが、元々、富山県高岡市の出身です。

険しい峡谷を縫うようにして走る

博士が考えたのは、国の発展のためアルミ産業を興すことでした。アルミ精錬には大量の電気が必要です。当時、電気と言えば水力。ところが北陸の川はどこも水利権が設定されていて、手出しができない。唯一、急峻な北アルプスから流れ下る黒部川だけが、河口付近を除いて水利権が設定されていませんでした。

そこで、黒部川の電源開発に乗り出したのです。まずは黒部鉄道を設立し、大正11年に三日市−下立間(現・地鉄本線の一部)を開業。同14年には宇奈月−猫又間(現・黒部峡谷鉄道)を、さらに昭和7年には欅平まで開通させました。

戦後、電力再編が行われ、宇奈月から先の事業は関西電力に引き継がれました。これらは工事用のトロッコでしたが、鐘釣や欅平に行く登山客の便宜を図るため、寄付金名目で有料乗車させていたということです。有名な話が、切符の裏に「命の保証はしません」という免責条項でした。黒部の谷で事故があると、けがでは済まないという意味もあったようです。

しかし、乗客が増え始めると、こうした形で続けるわけにはいきません。昭和46年には黒部峡谷鉄道として独立、営業運転を始め、路盤やATSの整備を図り、安全運行に取り組むことになりました。

ただし、今でも観光用だけではありません。「黒鉄」の株式の大半は関西電力が所有しているし、関電などの作業員を乗せた専用トロッコが毎日運行されています。さらに貨物用のトロッコもあります。

宇奈月駅で貨物を積み込む

さて、沿線は運がよければサルの群れやカモシカを見ることが出来ます。そんな車窓を楽しんでいるうちに鐘釣温泉に到着です。目の前の黒部川の川原で温泉が湧き出しており、川の流れと同じ目線で湯につかることが出来て気分は最高。さらに足を伸ばして終点・欅平で秘境の雰囲気を味わうのも一興です。

ちなみに冬場は雪崩などの危険もあり、線路など一部は撤去して、来年のオープンに合わせて再び組み立てるそうです。積雪状況によりますが、例年4月20日から11月30日までの運行が予定されています。


第ー回 : 生き残ったトロリーバス「環境考え導入」
第ニ回 : 生き残ったトロリーバス「雲上の電車」
第三回 : 日本唯一のケーブルカー「貨車付きと全線地下式」
第四回 : 縦横に走る鉄道網「ローカル最大級の地鉄」
第五回 : 黒部峡谷鉄道「秘境に分け入るトロッコ」
第六回 : 黒部ルート(上) 「鉄路は更なる奥山へ」
第七回 : 黒部ルート(下) 「世紀の大事業を訪ねる」
第八回 : もう一つのトロッコ「知られざる立山へ」
第九回 : 幻の鉄道<上>岩瀬―滑川間の「海岸線」
第十回 : 幻の鉄道<下>富山−高岡−金沢間の「加越能新線」
第十一回 : 富山湾沿岸鉄道「夢よ、再び」
第十二回 : 新幹線後の未来交通「並行在来線にLRTを」



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