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―石川県・金沢市―



都市の魅力は人や物が多く集積していることにありますが、自動車の集中は渋滞や環境問題、ひいては諸施設の郊外移転による中心市街地の空洞化などの問題を生みます。石川県は平成12年10月10日(火)〜15日(日)の6日間、金沢市、石川県警および建設省(現国土交通省)と共同で、「出かけよう、まちへ!考えよう、バスの魅力!」をキャッチフレーズに公共交通の導入を探る「交通実験2000」を実施しました。今回はその概要を紹介します。
【交通実験の背景と経緯】

金沢はご存知のとおり非戦災都市であり古くからの城下町です。このため都心部の道路は狭あいであり、また、都市の構造として都心から放射状に町並みや道路が形成されているため、金沢都市圏内を移動する車(通過交通は国道では約五十%)が都心部に集中し、しかも都心部の両側を流れる犀川と浅野川が障害となり、慢性的な渋滞と環境の悪化を招いています。 一方で、中心市街地の空洞化や地球レベルの環境問題、高齢化社会への対応といった問題も同時に進んでいます。 これらの複雑な都心問題を解決するため、県では金沢市と共同で、将来の金沢都心部の交通体系や都心空間のあるべき方向性を検討しており、@環状道路などを整備し、都心部から通過交通を排除する。A公共交通の充実により、都心部へのアクセス性を高めるとともに、外郭部に駐車場を整備、公共交通への移換を図ることにより、都心部のにぎわいを損なうことなく都心部へ流入するクルマを抑制する。B都心部は、歩行者と公共交通を優先し、環境やバリアフリーに配慮した魅力ある空間として整備することが必要ではないかと考えています。このため、平成十年度までに、ガイドウェイバスやLRT(低床式新型路面電車)などの新しい交通システム導入を、施策の柱の一つとして検討してきました。しかしながら、早期の導入には採算性や事業主体など、解決すべき問題が多く困難なことから、当面、新しい交通システム導入の前提となる公共交通の利用促進を進めるとともに、交通実験を通じ、都心交通施策についての県民・市民の意向を把握しながら合意形成を図っていくこととしています。

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【「交通実験2000」の実施】

(1)実験の実施

@期間/平成12年10月10日(火)〜15日(日)
A場所/国道157号を中心とする金沢都心部
B主体/石川県・金沢市・石川県警・建設省(金沢工事事務所)


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(2)実験の目的

今回の交通実験の目的・ねらいは、以下の三つとしました。

@公共交通の利用促進
A中心市街地のにぎわい創出
B新しい交通システム導入に向けた交通への影響評価


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(3)交通施策目標と実験メニュー

○交通実験における調査

「交通実験2000」では、実験メニューに合わせて、交通への影響を把握するため、
実験前と実験中、平日と休日に分けて次のような交通調査を実施しました。

・交差点交通量調査、渋滞長調査
・バス、自動車速度(所要時間)調査
・バス、駐車場利用者数調査
・歩行者交通量、裏通り交通量調査(休日のみ)
・最終バス、パーク・アンド・ライド、荷さばき、買物バス券など実験施策の利用実態調査

またアンケート調査については、一般県民・市民、バス利用者、自動車来街者、都心部事業所・商店主、宅配運送業者、タクシー運転手など実験施策メニューや相手に応じ十二種類のアンケートを作成、約四万枚を配布しました。回収状況は役九千枚(二三%)と、比較的高い回収率となっており、県民・市民の関心の高さがうかがえます。

(4)実験の具体的内容

@バス専用レーンの時間・区間延長

金沢の都心部である国道157号の有松→武蔵ヶ辻、武蔵ヶ辻→片町間において、朝夕実施しているバス専用レーン規制を日中も連続して実施(午前七時半〜午後六時半)。また、上有松→有松間で、朝のバス専用レーンの区間延伸をしました。バス専用レーンの交通規制については、警察(公安委員会)の権限となるため、道路標識並びに路面標示も変更して実施しました。この結果、バス専用レーン延長時の国道157号の交通量は約八%減少、周辺道路では変化はなく、周辺道路や郊外の道路への迂回が見られました。また、渋滞長・渋滞時間は一部交差点で増加しましたが、交差点通過所要時間は、約九%の増と推計され、全般的に大きな混乱はありませんでした。また、都心部までの所要時間は、朝の時間帯ではバスが自動車より約十分早く、そのほかの時間帯はほぼ同じという結果であり、バス専用レーンの効果で、バスは比較的スムーズな走行が保たれたと言えます。アンケートの結果、全体では施策に賛成が五割、反対が三割でしたが、影響を受ける自動車来街者や運送業者、タクシー運転手では反対が賛成より多くなっています。


A最終バスの時刻延長

バスの利便性向上策として、利用客の多い六路線(松任・四十万・光が丘・金石・東部車庫・平和町)で、終バス時刻を深夜十二時まで延長しました。結果は、実験二週間前と比べ木曜日では一五%の増でしたが、土曜日では倍増しました。七割が施策に賛成しており、利用者への周知が図られれば、曜日・路線によってはかなりの需要が見込めるものと考えられます。

Bパーク・アンド・ライドの拡大

実験中の六日間を通じ、金沢南部郊外の野々市町地内で、百五十三台の無料駐車場を設置し、パーク・ライドの臨時拡大を行いました。利用者には、都心部までの往復バス券(片道二百七十円)を進呈しました。利用状況は、初日は四五台四五人でしたが、日を追うごとに増加し、最後の十五日(日)には百五十二台三百九人とほぼ満車の状態となりました。結果、通勤時ばかりでなく、買物や休日のイベント時などの需要も高いことが分かりました。利用者のアンケート結果でも、七割強が満足と回答、今後の利用意向でも七割強(うち条件付五割強)が利用するとしており、潜在需要は高いものがあると言えます。ただ、利用しないとした理由ではバス・駐車料金負担を挙げる人が多く、今後は、駐車場の確保とともに料金の低減が課題と言えます。このほか、同時に金沢工事事務所の協力で、路上看板および携帯電話(iモード)を使い、駐車場までのバス接近情報や都心までの所要時間、バス時刻表などの情報提供のIT実験が行われました。これら情報提供のソフトサービスもこれから検討していくべき重要な課題の一つと言えます。


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C荷さばき車、客待ちタクシー対策

都心部の自動車流入抑制などの交通規制を行う上で重要なのが、荷さばき車・タクシー対策です。特にバス専用レーン規制を実施すると、その車線が駐停車禁止となるため、中心市街地の商業活動や宅配などの運送業務、タクシーの営業に支障を期す恐れがあるからです。今回の実験では、抜本的な対策は出来ませんでしたが、荷さばき車については、国道157号上に臨時荷さばきスペース(既存を含めて五ヶ所)の確保を行い、客待ちタクシーについては、タクシーベイを現行通り確保し、利用状況やアンケート調査を行い、問題点を明らかにしました。


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D買物バス券の発行

10月14日(土)〜15日(日)には、都心部の五つの商店街(香林坊、片町、タテマチ、広坂、柿木畠)のイベントとして「5タウンズフェスタ」が開催され、それに合わせて買物バス券サービスを実施しました。これは、バスで都心に訪れた人が「買物バス券サービス加盟店で二千円以上買物をすると、バスに設置されていた引換券と交換に二百円のバス割引券がもらえる」というシステムであり、料金面でのバス利用促進策として実施しました。結果、二日間で約千五百枚使用されました。これは、日曜日のバス来街者の約一割に当たります。アンケートでは、全体で六割、バス来街者で八割、自動車来街者で六割が賛成していますが、地元商店主では、短期間なので分からないなどの意見保留が六割弱(ほかには賛成三割、反対一割)を占めており、本格実施には期間を延ばして継続して実験する必要があると考えています。


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Eバス+歩行者天国の実施

実験最終日の十五日(日)には、地元イベントの開催に合わせて十一時から十八時まで、金沢の都心部の国道157号の香林坊から片町間で、四車線のうち二車線を歩行者天国、残り二車線を路線バスのみ通行できるという「バス+歩行者天国」を実施しました。これは、都心部を歩行者と公共交通(バス)優先の空間として整備することが、中心市街地の活性化につながるかどうか、また将来、新しい公共交通システムが導入された場合都心部の状況や周辺を含めた交通がどうなるかを、交通実験を通じた疑似体験の中でつかもうというねらいで行われたものです。実験に際しては、安全確保のためバス通行帯と歩行者空間とをプランターや防護策で分離し、区間内に臨時バス停を設置、数ヶ所設けた臨時横断個所には誘導員を配置し交通安全に努めました。結果、バスによる来街者数は、実験前の日曜と比べ役三千人(四割)増加しており、都心部主要個所での歩行者交通量でも、回遊性の向上分も含め約八割増となっています。これは、当日好天に恵まれたことやイベントを開催したこともありますが、実験開始前にねらっていた「中心市街地のにぎわい創出」としては充分な効果があったと言えます。交通への影響について、国道157号の交通量は、実験前に比べ二三%減少しましたが、自動車来街者数は変わっておらず、通過交通が大幅に減少しました。一方、周辺道路では三%増加、直接の迂回路となる交差点では夕方に渋滞したものの、大きな混雑はありませんでした。アンケートでの、施策に対する賛否は、全体で賛成五割強、反対二割弱、バス来街者・自動車来街者で賛成七割、地元商店主で賛成五割(反対二割)であり、賛成が多数を占めています。バスのみ通行可としたことについては、全般に賛成する意見が多いものの、タクシーも通すべきとの意見もあり、開催時期や頻度、イベントの有無などとともに、今後検討を加える必要があると考えています。

(5)実験結果の活用と今後の方針

交通の影響については、バス専用レーン時間延長時、バス+歩行者天国実施時とも周辺道路が若干混雑したものの大きな混乱とはならず、その意味で新しい公共交通システムの導入の可能性が残されたと考えております。アンケート結果も実験で行った施策に賛成する意見も評価する意見が多く、今後の施策推進に希望が持てる結果となっています。ただ、今回の実験は、多くの人々の協力と経費をかけたこと、実施時期や天候、料金負担などの実施条件についても好条件の中で行われたものであり、今後の施策の本格実施となると、もっと手間と費用のかからない方法で、しかも、もっと悪い条件の場合どうかを含め、実験を積み重ねる必要があると考えています。今回の実験からの今後の方針としては、まず、通過交通排除の受け皿として、環状道路の整備をこれまで以上に推進するともに、右折車線などが不足している幾つかの交差点についても、事業化に向けて検討を進める必要があります。荷さばき・タクシー対策についても、ソフト・ハード両面で具体的に対応していく必要があります。また、パーク・アンド・ライドなどのバス利用促進方策についても、関係機関と調整を図りながら推進していく必要があります。新しい交通システムの早期の導入には、事業主体や採算性、補助・支援制度など多くの課題があります。今回の交通実験は、課題解決の第一歩と考えており、実現性の高い施策から本格実施したいと考えています。

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(6)おわりに

交通実験2000の実施に当たっては、警察を始め、地元商店街、北陸鉄道梶Aトラック協会、タクシー協会など多くの皆様方のご理解とご協力を頂き感謝しております。今回の実験結果については、詳細に検討・評価し、今後の都心交通計画に反映させ、将来の新しい交通システムの導入につなげていければと考えています。




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