中川京都大学院助教授

澤武紀行 オペラ歌手

 
 
 富山県の高岡市と新湊市を結ぶ路面電車の「万葉線」は、今日まで地域交通を担う基盤としてがんばってきました。しかし、民間による現在の経営形態ではこれ以上存続することは難しいとして、ここ数年、廃止か存続かの議論が行なわれてきました。 

 その過程においては、需要や採算の見通しについて分析を行うほか、採算だけでは評価することのできない社会的な基盤としての万葉線の役割などについても議論されてきました。市民の手によって支援組織が結成されたり、存続に向けての署名活動が行われたりもしました。また、全国各地の路面電車を支援する皆さんからの応援もありました。

 その結果、富山県と高岡・新湊両市は、市民と一緒にこの路線を守っていくことを決断し、市民と行政が出資した新しい経営形態で万葉線を再出発させることになりました。 

 わが国の路面電車のなかで最も利用客が少ないと言われている万葉線が、たくさんの真剣な議論を経たうえで、社会的な有用性が認められて存続が決まったことは、需要の減少に悩んでいる全国の多くの公共交通にとって希望と勇気を与えるものであるとも言えるのではないでしょうか。市民と行政とのパートナーシップによって、万葉線を元気に再生させなければいけません。 

 地域における公共交通は、「公共」の名を持ちながらも、市民には手の届かないところで運営されている場合も少なくないのが全国各地での共通した現状ですが、 万葉線は、真に市民のための公共交通として再出発しようとしています。そして、そのためには市民自らが責任を持たなければいけないということも認識されてきています。 

 市民のために、市民の責任によって支えられていく新しい公共交通の方向を指し示す試みとも言える万葉線の再出発に、多くの人たちからのご支援を期待したいと思います。

 万葉線沿線の高岡市と新湊市には、訪れてみたくなるような魅力的な文化や自然がいっぱいあります。魚やお寿司など食べ物がおいしいことでも有名です。万葉線に乗る旅もぜひご経験ください。



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